再処理と原子力発電の違い、プルサーマルと高速増殖炉





六ヶ所村はどこにあるの?

 下北半島の太平洋側にある村。核燃料サイクル施設などの原子力施設の他、国家石油
備蓄基地やヤマセを利用した風力発電基地等、エネルギー関連施設が集中しており、伝
統的な農業・水産業に加え、数々のエネルギー関連施設を中心としてエネルギー産業の
推進を進めている。



再処理工場とは何か?

 原子力発電所で使われた使用済み核燃料からもう一度使用可能なウラン・プルトニウ
ムを取り出し、発電所で使用可能な形態に加工する工場。もともとは、長崎型原子爆弾
の製造のためのプルトニウム抽出技術を民間用に転用したもの。日本には茨城県東海村
と青森県六ヶ所村に設置されており東海村再処理工場は1981年から本格稼動をはじめて
いる。東海村の再処理工場は高速増殖炉の常陽・もんじゅ等の実験用燃料を供給するの
が主な役割なため処理能力が年間200tであるのに対し、六ヶ所村再処理工場は4倍の
800tの処理能力を持つため問題となっている。しかし、六ヶ所村の再処理工場だけでは
国内の使用済み燃料の全てを再処理しきれず、第二再処理工場の建設が計画されている
(2040年ごろ。)。また、日本初の商業用再処理施設という点でも、東海村再処理施設
とは多く異なる。



原子力発電とは何か?(軽水炉の場合)

 放射性物質を核分裂させた熱で水蒸気を発生させ、タービンを回して発電する方法。
火力発電所では熱を化石燃料を燃焼させることで得ているのに対し、原子力発電所では
放射性物質を用いているだけの違い。発電時にCo2や窒素酸化物を出さないことやエネ
ルギー供給が安定していることが原子力発電にとっての利点である。



原子力発電を行うまでの流れ

 原子力発電所で使われる核燃料はウランで、その中には核分裂を起こしやすいウラン
235と起こしにくいウラン238が含まれているが、天然ウランの1%以下がウラン235なた
め、発電を行うためにはウラン235の濃度を3%程度にすることが必要となる。

 この濃度を濃くする工程がウラン濃縮と呼ばれ、このときに残されるウラン238がウ
ラン235よりも核分裂を起こさないため、劣化ウランと呼ばれている。また、ウラン235
を90%程度に濃縮すると原子爆弾が製造できる。

(広島に落とされた原子爆弾はこの型。)

 ※ u235:1%、u238:95%、pu239:1%、核分裂性物質:3%



再処理でしていること

 ウラン燃料を原子炉で核分裂させた後の使用済み核燃料には、ウラン238、ウラン
235、プルトニウム239、核分裂性物質が含まれている。この中からウランとプルトニウ
ムを取り出して、MOX粉に加工するのが再処理工場のしていることである。MOX粉とは、
プルトニウムとウランを1:1の割合で混ぜ合わせた物質で、プルトニウムの核兵器転
用の危険性を回避するための措置であるが、濃縮技術を持っていればプルトニウムを再
び取り出すことは可能で効果はあまり期待できない。MOX粉を加工しなおしプルトニウ
ムの含有量を4〜9%にして燃料の形態にしたものがMOX燃料と呼ばれており、日本で
は青森県六ヶ所村にMOX燃料工場の建設を計画中である。また、英国、仏国に依頼した
MOX燃料はこれからの返還予定であるが、1999年に英国で加工されたMOX燃料にデータ捏
造があったとして関西電力が燃料を返還し問題を呼んだこともある。



高速増殖炉(FRB)とは

 MOX燃料専用の原子炉で、燃焼させたMOX燃料中のプルトニウムの量以上のプルトニウ
ムを燃焼の過程で取り出すことができる。燃料を原子炉内で作れるので夢の原子炉と呼
ばれている。

 軽水炉(普通の原子炉のことPWR・BWR等)の場合、タービンを回すために用いる物質
を中性子の動きを止める効果の大きい水(軽水)を用いている。これによって中性子の
動きを抑えているのに対し、高速増殖炉の場合は水の代わりに金属ナトリウムを用いて
中性子の動きを高速に保ったままにしている。こうすることによってウラン238をプル
トニウム239に変化させやすくし、プルトニウムの増殖をしている。これにより劣化ウ
ランを有効に使用でき、エネルギー資源の残量が2000年ほど伸びるといわれている。こ
の高速増殖炉の名の由来は、中性子を高速状態に保つことによりプルトニウムを増殖さ
せることのできる原子炉からきているのである。しかし、金属ナトリウムの扱い、核分
裂の速さの制御が非常に難しいことから研究が難航して、開発を断念する国が少なくな
い。現在、開発を継続している国は日本、フランス、中国などであるが、日本の高速増
殖炉の原型炉である「もんじゅは」1995年にナトリウム漏れによる事故を起こし停止し
たままになっている。また、高い技術を必要とするため、商業ベースでの運転の見通し
がまったく立てられていない。いずれにせよ、高速増殖炉が安全かつ商業ベースの運転
に乗せることができれば夢の原子炉になることは確かである。

 開発の流れ 実験炉→原型炉→実証炉→実用炉(商業用炉)



注:軽水炉でもu238からpu239は生まれている。高速増殖炉はその増殖比を高めたも

  の。もんじゅの稼動再開が最近決まった。



プルサーマル計画とは

 プルトニウム(MOX燃料)を普通の原発で燃焼させることをいい、語源はプルトニウ
ムとサーマル・ニュートロン・リアクター(原子炉)とを合わせた和製語である。

日本でのプルサーマルの推進理由には、資源の少ない日本においての資源の有効利用、
核拡散・兵器転用を疑われる余剰プルトニウムを持たないための手段を掲げている。し
かし、予定通りに高速増殖炉の開発が進まず、たまり続けるプルトニウムの用途に困っ
た苦肉の策という批判もある。他国においては、核兵器の解体で出たプルトニウムの活
用方法として高速増殖炉の変わりにプルサーマルが取り入れられているが、積極的なプ
ルサーマル推進国は少ない。使済みMOX燃料の処理方法が曖昧であること(地中に埋め
られるようになるまでに500年かかる。ウラン燃料は30〜50年。)、使用済み核燃料を
つんだトラックが一般道を走ることなどが問題になっている他、ウラン燃料用の原子炉
でMOX燃料を使うことに対する危険性や実績のないプルトニウム濃度によるMOX燃料使用
などが挙げられているが、ウラン燃料用の原子炉内でもプルトニウムが生み出されウラ
ンと同じように燃えていること、燃料の配置の工夫などにより制御棒による制御の低下
をカバーできることなどをあげて、安全性を強調している。現在、国内の16〜18基の原
子炉で2010年のプルサーマルの導入が検討されている。